「こっちは私がやるから、あなたはそっちをやって、」「急いで酸素、吸引して、」「そうじゃないでしょう、もういいから私に代わって頂戴、あなたはモニターを付けて、」
絶叫に近い声が飛び交う中、分単位の緊張感がみなぎる救急医療の現場、結果など考える余裕すらないほどの無我夢中さ、必死さの中で活気に満ちた躍動感に溢れた病院であることを常に願ってきました。
容易に結果のでない苛立ち、失望と落胆、しかし、それを遥かに上回る感動と喜び、地域医療を守るという使命感だけに支えられて今日迄、日々の診療を過ごしてきました。
救急医療において最も大切なことは専門性ではなく、要請があればとにかく患者を受け入れるという姿勢です。何故なら救急医療とは挑戦する事であり、挑戦とは結果を考えずに創意と勇気を持って挑むことと肝に銘じてきました。
その際重要なことは医学的知識を基礎に病態を科学的に分析し、手の内に入る範囲、危険度を論理的に見極める能力です。行うべき処置を自分の技量と状況に照らし合わせて選択する、脱臼はたとえ整復手技は未経験であったとしても、全身麻酔をかければ未熟者でも整復可能となります。
自分達の仕事に誇りを持てなければ、決して心の底からの笑顔は生まれない、その天真爛漫な笑顔を今日もまた見たくて、どんな辛苦があっても耐えて続けてくることができました。
父が掲げた「明倫医道を究(きわ)むる」という明倫会の理念を心に刻んで、病院一丸となって明日も救急医療に取り組んで行く所存です。
平成29年9月7日
明倫会今市病院院長 熊谷眞知夫